早朝4時。まだ暗いうちに車を走らせ、市場へ向かう。この時間が、一日の中で一番好きかもしれない。冷たい空気と、魚の香りと、威勢のいい声が混ざり合う場所。
ひときわ光る真鯛
いつもお世話になっている仲買人の田中さんに声をかけられた。「今日はいいものが入ってるよ」。案内されたのは、脂ののった天然の真鯛。目が澄んでいて、うろこに張りがある。迷わず仕入れることにした。
素材が良ければ、引き算の料理
これだけ質のいい魚は、余計なことをしないのが一番だと思っている。バターと白ワイン、レモンを少し。シンプルなソテーにして、素材そのものの甘みを感じてほしい。
その日の夜、お客様が「魚がこんなにおいしいとは思わなかった」とおっしゃってくださった。仕入れの苦労が報われる瞬間だ。田中さんに感謝しながら、翌朝また市場へ向かう準備をした。